障害年金の「精神疾患」について、どのような基準で障害等級が決定されているの分からず、悩んでおりませんでしょうか?
精神疾患については、精神疾患用に「認定基準」が定められており、認定基準の中に、障害等級の決定について記載がされております。
このページでは、気分障害(うつ病、躁うつ病)の認定基準、受給例について、ご説明させていただきます。
その他の要件については、下記リンクよりご確認をお願いいたします。
■適用となる疾患例
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、てんかん、統合失調症、知的障害、
発達障害〔自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習症/限局性学習障害(SLD)〕、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)、頭部外傷後遺症、認知症など
精神の障害は、認定要領で下記のように区分されています。
このページでは、「気分(感情)障害」の認定要領等について、ご説明させていただきます。
■認定基準
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 | |
---|---|---|---|
国年令別表 | 1級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの | |
2級 | 精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの | ||
厚 年 令 | 別表第1 | 3級 | 精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えること | |||
別表第2 | 障害手当金 | 精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
〔解説と具体例〕
1級
身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない又は行ってはいけないもの。
病院内の生活であれば、活動の範囲がベッド周辺に限られるもの、家庭内の生活であれば、活動の範囲が就床室内に限られるものをいいます。
日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの)。
2級
家庭内の極めて温和な活動(軽食作り・下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの。
病院内の生活であれば、活動の範囲が病棟内に限られるものであり、家庭内の生活であれば、活動の範囲が家屋内に限られるものをいいます。
日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
(必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの)。
3級
労働することはできるが、健常者と同等に労働することができないものをいいます。
障害手当金
「傷病が治ったもの」で、労働することはできるが、健常者と同等に労働することができないものをいいます。
■認定要領
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの |
3級 | 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
□神経症について
神経症(パニック障害、強迫性障害、ノイローゼなど)は、原則として認定の対象にならないとされています。
ただし、臨床症状から判断して※精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱われます。
※ICD-10(国際疾病分類第10版)のF2(統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害)又はF3(気分(感情)障害)の症状を指します。
□人格障害について
人格障害(パーソナリティ障害)は、原則として認定の対象にならないとされています。
ただし、上記と同様に臨床症状により、認定対象となることがあります。
■精神の障害に係る等級判定ガイドライン
精神障害の等級判定を適正に行うため、平成28年9月よりガイドラインが新設されました。要点について、ご説明させていただきます。
①診断書の「日常生活能力の程度」の5段階評価と「日常生活能力の判定」の7項目の評価を数値化して組合せ、認定する等級の目安とする。
(5) | (4) | (3) | (2) | (1) | |
---|---|---|---|---|---|
3,5~4,0 | 1級 | 1・2級 | |||
3,0~3,4 | 1・2級 | 2級 | 2級 | ||
2,5~2,9 | 2級 | 2・3級 | |||
2,0~2,4 | 2級 | 2・3級 | 3級・非該当 | ||
1,5~1,9 | 3級 | 3級・非該当 | |||
1,0~1,4 | 非該当 | 非該当 |
【横軸:(1)~(5)】
「日常生活能力の程度」の5段階評価を指します(診断書⑩欄ウの3)。
【縦軸:1.0~4,0】
「日常生活能力の判定」の4段階評価について、程度の軽い方から1~4の数値に置き換えて、その平均を算出したものになります(診断書⑩欄ウの2)。
②障害認定医が、上記等級の目安を参考としつつ、その他の様々な要素を考慮して総合的に等級判定をする。
総合評価の際に考慮される「5つの要素」として
上記具体的な内容については、下表のとおりであります。
〔現在の病状または状態像〕
考慮すべき要素 | 具体的な内容例 |
---|---|
認定の対象となる複数の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断する。 | |
ひきこもりについては、精神障害の病状の影響により、継続して日常生活の制限が生じている場合は、それを考慮する。 | |
気分(感情)障害については、現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)及びそれによる日常生活活動等の状態や予後の見通しを考慮する。 | 適切な治療を行っても症状が改善せずに、重篤なそうやうつの症状が長期期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する。 |
〔療養状況〕
考慮すべき要素 | 具体的な内容例 |
---|---|
通院の状況(頻度、治療内容など)を考慮する。薬物治療を行っている場合は、その目的や内容(種類・量(記載があれば血中濃度)・期間)を考慮する。また、服薬状況も考慮する。通院や薬物治療が困難または不可能である場合は、その理由や他の治療の有無及びその内容を考慮する。 | |
入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)を考慮する。 | 病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援護が継続して必要な場合は、1級の可能性を検討する。 |
在宅での療養状況を考慮する。 | 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級または2級の可能性を検討する。 |
〔生活環境〕
考慮すべき要素 | 具体的な内容例 |
---|---|
家族等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する。 | 独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する。 |
入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居など、支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する。 | |
独居の場合、その理由や独居になった時期を考慮する。 |
〔就労状況〕
考慮すべき要素 | 具体的な内容例 |
---|---|
労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受ける援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。 | |
援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。 | |
相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。 | 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。 |
就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。 | |
一般企業(障害者雇用制度による就労を除く)での就労の場合は、月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。 | |
安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。 | |
発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。 | |
精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。 | |
仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。 |
〔その他〕
考慮すべき要素 | 具体的な内容例 |
---|---|
「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」に齟齬があれば、それを考慮する。 | |
「日常生活能力の判定」の平均が低い場合であっても、各障害の特性に応じて特定の項目に著しく偏りがあり、日常生活に大きな支障が生じていると考えられる場合は、その状況を考慮する。 | |
依存症については、精神病性障害を示さない急性中毒の場合及び明らかな身体依存が見られるか否かを考慮する。 |
なお、ガイドラインの施行にあわせて、診断書を作成する医師向けに記載要領が出されていますので、診断書作成依頼をする際に、ご活用することをお薦めいたします。
「ガイドラインの詳細」と「医師向けの診断書記載要領」は、下記をクリック
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html
ご請求者様のご家族の方よりお問合せをいただき、障害年金の手続を代行させていただきました。
双極性感情障害(躁うつ病)に罹患されており、数年前より、抑うつ気分、不安、不眠、不穏といった症状があり、現在、医療機関に入院中とのことでした。
初診医療機関は廃院していたため、当時の診察券など、初診を証明する書類を添付いたしました。
障害認定日頃の受診歴はなかったため、事後重症請求で請求をいたしました。
障害年金申請直前に、ご家族の方が、精神障害者保健福祉手帳(3級)を取得しており、障害年金の等級をご心配されておりましたが、
審査機関からの照会等もなく、申請から約2カ月ほどで、障害厚生年金2級にて支給決定されました。
ご請求者様よりお問合せをいただき、障害年金の手続を代行させていただきました。
数十年前の交通事故が原因で、不安障害となり、その後解離性障害、気分変調症、現在に至っては、うつ病と診断され、抑うつ気分、不安、不眠、希死念慮といった症状があり、医療機関に通院中とのことでした。
障害認定日頃に心療内科を受診していたものの、障害状態に該当していないと判断したため、事後重症請求で請求をいたしました。
障害年金申請時、就労中であったため、就労に関する意見書、また、障害の原因が交通事故であったため、「第三者行為事故状況届」を添付し、申請に挑みました。
審査機関からの照会等もなく、申請から約2カ月ほどで、障害基礎年金2級にて支給決定されました。
請求者様よりお問合せをいただき、障害年金の手続を代行させていただきました。
双極性感情障害(躁うつ病)、及びASD(自閉症スペクトラム障害)に罹患されており、数年前より、抑うつ気分などの症状があり、現在、障害者雇用にて、正社員として就労中とのことでした。
障害認定日頃に診療内科を受診していたものの、その当時は寛解状態、以後、通院歴が殆どないなど、障害状態に該当していないと判断したため、事後重症請求で請求いたしました。
障害年金申請時、就労中であったため、就労先での配慮の状況等を的確にまとめ、申請に挑みました。
審査機関からの照会等もなく、申請から約2カ月ほどで、障害厚生年金3級にて支給決定されました。
請求者様(過去に国家公務員であった方)よりお問合せをいただき、障害年金の手続を代行させていただきました。
双極性感情障害(躁うつ病)に罹患されており、数年前より、抑うつ気分等の症状があり、現在、障害者雇用での就労を達成するべく、就労移行支援事業所を利用しながら、求職活動中とのことでした。
1番初めに医療機関を受診した頃から、上記症状が再発して次に医療機関を受診した頃まで、相当程度の期間を有していた等あったため、
再発後に受診した日を障害年金上の初診日として主張(社会的治癒を主張)し、障害認定日請求にて請求いたしました。
審査機関〔国家公務員共済組合連合会(KKR)〕からの照会等もなく、申請から約3カ月ほどで、遡及分(3年8カ月分)、請求月以降分共、障害厚生年金2級にて支給決定されました。
以上が、「気分障害(うつ病、躁うつ病)」についての、認定基準等になります。
障害年金は、障害状態に該当していなければ受給することはできません。認定基準を理解し、障害状態に該当しているかどうか、しっかりと確認をしておきましょう。
また、就労しているからといって、必ずしも、障害年金を受給することができないということはありませんので、この点についても、留意しておくことが必要です。
障害年金の請求手続は、提出書類の用意や作成に多くの時間と労力を要すること、また何よりも、障害年金制度が複雑であることから、準備した書類が不本意なものになることがあります。
これにより、本来受給することができたであろう年金が受給できない(遡及して障害年金を受給できる可能性があったにもかかわらず、受給できない)といったことが生じてしまいます。
もちろん、最初の手続で審査が通らなかった場合、再請求や不服申立てを行うことはできますが、最初の申請よりも、当然審査のハードルは高くなります(最初の申請がとても重要です)。
埼玉県桶川市の山内社会保険労務士事務所所では、審査基準に関する知識、ポイントを押さえた書類作成等を十分に活用することで、受給の可能性を上げることに尽力いたします。
よろしければ、サービス詳細画面をご覧ください。