障害年金の「腎臓疾患」について、どのような基準で障害等級が決定されているのか分からず、悩んでおりませんでしょうか?
腎臓疾患については、腎臓疾患用に「認定基準」が定められており、認定基準の中に、障害等級の判定について記載がされております。
このページでは、腎臓疾患の認定基準、その他申請時のポイントについて、ご説明させていただきます。
その他の要件については、下記リンクよりご確認をお願いいたします。
■適用となる疾患例
糖尿病性腎症、慢性腎炎(ネフローゼ症候群を含む)、腎硬化症、多発性嚢腎炎、急速進行性腎炎、腎盂腎炎など
■認定基準
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|---|
国年令別表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認めれれる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの | |
厚年令 別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
〔解説と具体例〕
1級
身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの。
病院内の生活であれば、活動の範囲がベッド周辺に限られるもの、家庭内の生活であれば、活動の範囲が就床室内に限られるものをいいます。
「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」
他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものをいいます。
2級
家庭内の極めて温和な活動(軽食作り・下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの。
病院内の生活であれば、活動の範囲が病棟内に限られるものであり、家庭内の生活であれば、活動の範囲が家屋内に限られるものをいいます。
「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものをいいます。
3級
労働することはできるが、健常者と同等に労働することができないものをいいます。
■認定要領
自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、人工透析療法の実施状況、日常生活状況等により、総合的に認定されます。
〔検査項目〕
①慢性腎不全
区分 | 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
---|---|---|---|---|---|
ア | 内因性クレアチニンクリアランス | ml/分 | 20以上 30未満 | 10以上 20未満 | 10未満 |
イ | 血清クレアチニン | mg/dl | 3以上 5未満 | 5以上 8未満 | 8以上 |
②ネフローゼ症候群
区分 | 検査項目 | 単位 | 異常 |
---|---|---|---|
ア | 尿蛋白量 | g/日又はg/gCr | 3.5以上を持続する |
イ | 血清アルブミン | g/dl | 3.0以下 |
ウ | 血清総蛋白 | g/dl | 6.0以下 |
※検査成績については、性質上変動しやすいので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとされています。
〔一般状態区分〕
区分 | 一般状態 | |
---|---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの | |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など | |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの | |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの | |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベット周辺に限られるもの |
各等級に該当すると認められるものについては、下表のとおりです。
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 前記①の検査成績が高度を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 |
|
3級 |
|
□人工透析の取扱
人工透析療法施行中のものは、2級と認定されます。
なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等により、さらに上級等級に認定されます。
□腎臓移植の取扱
腎疾患による、障害年金を申請する際のポイントについて、ご説明させていただきます。
【障害状態の確認】
腎疾患の障害状態については、上記の認定基準から、下表のように見立てをすることができます。
障害等級は、検査数値と一般状態区分で大方決まります。
〔慢性腎不全〕
検査成績 (診断書⑫欄) | 一般状態区分(診断書⑪欄) | |||
---|---|---|---|---|
イ | ウ | エ | オ | |
高度異常が1個以上 | 3級 | 2級、3級 | 2級 | 1級 |
中等度異常が1個以上 | 3級 | 2級、3級 | 2級 | 2級 |
軽度異常が1個以上 | 3級 | 3級 | 3級 | 3級 |
〔ネフローゼ症候群〕
検査成績 (診断書⑫欄) | 一般状態区分(診断書⑪欄) | ||||
---|---|---|---|---|---|
イ | ウ | ||||
血清アルブミン、又は血清総蛋白のいずれかに異常値 |
3級
| 3級 | |||
尿蛋白量に異常値 |
【初診日の確認】
糖尿病性腎症など、長い年月を経て慢性腎不全になる疾患の場合、初診医療機関を特定する際には、慎重に行う必要があります。
【障害認定日の確認】
障害認定日は、初診日から1年6カ月経過した日となります。
ただし、人工透析療法を行っている場合は、「障害認定日の特例」により、人工透析を開始した日から3カ月経過した日が障害認定日となります。
以上が腎疾患の認定基準、申請時のポイントについてのご説明になります。
障害年金は、障害状態に該当していなければ、受給することはできません。認定基準を理解し、障害状態に該当しているかどうか、しっかりと確認をしておきましょう。
障害年金の請求手続は、提出書類の用意や作成に多くの時間と労力を要すること、また何よりも、障害年金制度が複雑であることから、準備した書類が不本意なものになることがあります。
これにより、本来受給することができたであろう年金が受給できない(遡及して障害年金を受給できる可能性があったにもかかわらず、受給できない)といったことが生じてしまいます。
もちろん、最初の手続で審査が通らなかった場合、再請求や不服申立てを行うことはできますが、最初の申請よりも、当然審査のハードルは高くなります(最初の申請がとても重要です)。
埼玉県桶川市の山内社会保険労務士事務所所では、審査基準に関する知識、ポイントを押さえた書類作成等を十分に活用することで、受給の可能性を上げることに尽力いたします。
よろしければ、サービス詳細画面をご覧ください。