障害年金の「悪性新生物(がん)」について、どのような基準で障害等級が決定されているのか分からず悩んでおりませんでしょうか?
悪性新生物(がん)については、悪性新生物(がん)用に「認定基準」が定められており、認定基準の中に、障害等級の判定について記載がされております。
このページでは、悪性新生物(がん)の認定基準を中心に、申請時のポイント、受給例についても、ご説明させていただきます。
その他の要件については、下記リンクよりご確認をお願いいたします。
■適用となる疾患
悪性腫瘍(がん)
■認定基準
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|---|
国年令別表 | 1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認めれれる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの | |
厚年令 別表第1 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
〔解説と具体例〕
1級
身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの。
病院内の生活であれば、活動の範囲がベッド周辺に限られるもの、家庭内の生活であれば、活動の範囲が就床室内に限られるものをいいます。
「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」
他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものをいいます。
2級
家庭内の極めて温和な活動(軽食作り・下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの。
病院内の生活であれば、活動の範囲が病棟内に限られるものであり、家庭内の生活であれば、活動の範囲が家屋内に限られるものをいいます。
「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものをいいます。
3級
労働することはできるが、健常者と同等に労働することができないものをいいます。
■認定要領
上記認定基準は抽象的で分かりづらいので、「認定要領」をご一読し、ご自身の病状が障害状態に該当しているか否か確認をしていきましょう。
①悪性新生物(がん)による障害は、次のように区分されています。
ア:悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生じる局所の障害
イ:悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)による全身の衰弱、又は機能の障害
ウ:悪性新生物に対する治療の効果として起こる全身衰弱、又は機能の障害
ア:例えば、食道がんにより、そしゃく、嚥下機能に障害がある場合をいいます(身体の部位に障害が残った場合)。…診断書は「そしゃく、嚥下機能の障害用」を使用します。
イ:がんにより、身体が衰弱している場合をいいます(緩和ケアに入った状態)。
ウ:抗がん剤により、身体が衰弱している場合をいいます。…診断書は「その他の障害用」を使用します。
②悪性新生物(がん)による障害の程度を一般状態区分表で示すと下表のとおりになります。
〔一般状態区分〕
区分 | 一般状態 | |
---|---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの | |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など | |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの | |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの | |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベット周辺に限られるもの |
③悪性新生物による障害の程度は、基本的には上記「認定基準」の障害の状態が考慮されますが、各等級に相当すると認められるものを例にすると下表のようになります。
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 | 衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 | 著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
□転移性悪性新生物の取扱
原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものについては、「相当因果関係」があるものと認められます。
このページでは、悪性新生物(がん)による障害年金申請で最も多いとされる、「抗がん剤の副作用による申請」について、ポイントのご説明をさせていただきます。
【障害状態の確認】
障害状態に該当しているか否かについては、上記認定基準、認定要領に記載されているところではありますが、
つまるところ、抗がん剤副作用により日常生活(労働を含む)に支障がある場合には、障害状態に該当するということがいえます。
上記のことから、提出する診断書(⑮:自覚症状欄)には、抗がん剤副作用による症状について、記入漏れがないよう記載していただく必要があります(全身倦怠感、関節痛、手足のしびれ、食欲不振、吐き気など)。
また、抗がん剤投与時は、抗がん剤を投与できるだけの体力があるということで、PS(Performance Status)の評価が低くなる、つまり、診断書の「一般状態区分」の評価が低くなってしまうことについても、注意が必要であることがいえます。
上記の点にご留意していただき、診断書等、申請に必要な書類のご準備をしていただくことをお勧めいたします。
他の社労士に相談したところ、「フルタイム就労では、障害年金を受給できない」と言われ、納得ができず、何とか受給したいとのことで、お問合せをいただきました。
ご相談者様は、食道胃接合部癌という病気に罹患され(ステージⅣ:余命1年)、現在も継続して抗がん剤による治療をおこなっております。
障害認定日当時は休職されておりましたが、その後直ぐに職場復帰を果たし、ご面談時には休職前と同様の給料、勤務日数にて就労をされておりました。
上記のような就労状況ではありましたが、抗がん剤の副作用による症状、就労先での配慮の状況等を丁寧に申立て、請求の準備をいたしました。
請求から約2カ月ほどで、障害認定日の翌月以降分(遡及分)、及び請求月以降分共、障害厚生年金3級にて無事に支給決定されました(2年更新)。
〔就労時のポイント〕
抗がん剤の副作用で障害年金を申請する際に、注意すべきは、「就労の有無」です。アルバイト、正社員など雇用形態にかかわらず、就労していることをもってして、障害の程度が軽くみられ、不支給とされることが散見しております。
上記のことから、定型の申請書類とは別に、就労先での配慮の状況等を、別途作成するなどの対策が必要であるかと思います。
以上が、「悪性新生物(がん)」についての、認定基準等になります。
障害年金は、障害状態に該当していなければ受給することはできません。認定基準を理解し、障害状態に該当しているかどうか、しっかりと確認をしておきましょう。
障害年金の請求手続は、提出書類の用意や作成に多くの時間と労力を要すること、また何よりも、障害年金制度が複雑であることから、準備した書類が不本意なものになることがあります。
これにより、本来受給することができたであろう年金が受給できない(遡及して障害年金を受給できる可能性があったにもかかわらず、受給できない)といったことが生じてしまいます。
もちろん、最初の手続で審査が通らなかった場合、再請求や不服申立てを行うことはできますが、最初の申請よりも、当然審査のハードルは高くなります(最初の申請がとても重要です)。
埼玉県桶川市の山内社会保険労務士事務所所では、審査基準に関する知識、ポイントを押さえた書類作成等を十分に活用することで、受給の可能性を上げることに尽力いたします。
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